世界的ブーム『ポイントダンス』を生んだクリエイティブ戦略
こんにちは!ゼネラルマネージャーの山岡まどかです。大変な社会情勢ですが、楽天のサービスやコンテンツと触れている時間が楽しく心豊かな体験になるようにみなで日々奮闘しています。
さて、2016年に顧客戦略部で作った楽天ポイントのテレビCMがTikTokで世界規模のバズりを見せ、これまでに各国から28万件以上のダンス動画が投稿、総再生回数は10億回を超えているようです(※1)。
先日Business Insiderにも取り上げてもらいましたが、ユーザー発信のムーブメントの爆発力を感じつつ、クオリティにこだわり抜いたコンテンツは年月国境を越えるのだなと感慨深い気持ちです。
今回はCMのクリエイティブディレクション秘話、そしてブランドやキャラクターが世の中で愛されるために必要なクオリティへの投資について、私たちの考えを書いていきたいと思います。
一流クリエイターの力を結集
楽天ポイントは総合満足度や貯まりやすさ等で圧倒的なNo.1ポイント(※2)ですが、2016年時点ではその認知にギャップがあり機会損失が発生していたことから、楽天ポイント初のブランディングCMを作ることになりました。
ポイントは金銭的、経済的な価値がすべてと思われているかもしれませんが、実はかなりエモーショナルで非合理的なもの。そんなポイントの楽しさ、嬉しさを伝えるために選んだのが、お買いものパンダを登場させ、歌とダンスで見ている人がウキウキするようなCMにすることでした。
圧倒的なNo.1性を訴求する以上、見たことのないようなクオリティでインパクトを残したい。声、音楽、ダンス、3Dアニメーションすべて一流の力を結集させよう。声はピカチュウやチョッパーでおなじみ、奇跡のような可愛らしさを持つ大谷育江さん。振り付けはAKB48や妖怪ウォッチも手掛け最前線を走り続けるラッキィ池田さん。そしてドラえもんやシン・ゴジラの3Dアニメーションを手掛けた白組とタッグを組むことになりました。
一般的に効果の回収が見えづらいブランディングCM制作において、会社にも前のめりの戦略判断、投資決定をしてもらいました。
中毒性の高いクリエイティブ
もちろんプロや代理店に任せきりではなく、むしろビジョンを共有し、がんがんディレクションを出しました。わずかな文字数の歌詞に戦略を反映するため何度も練り直したり、アニメーションの数百コマすべてをミリ単位で修正したり、お買いものパンダの初の声としてこれだ!と直感的に思えるまで何十パターンも歌い方を試してもらったり、マイナーキーで意外性を感じさせるメロディにしたり、心に引っかかりを残すような表情を差し込んだり(そうして生まれたのが、一瞬だけ出る小憎たらしい表情です)。
とにかくチームのクリエイティビティを出し尽くしたと言える自信作。おかげさまで2016年の放映時も好評で、CM好感度のトップ10にランクイン(※3)。なぜか赤ちゃんが泣き止むという評判も広がり、世のお母さん方にも人気でした。そんなどこか中毒性のあるクリエイティブを作れたことが、今になっても世界で愛される理由なのだと思います。
楽天ポイントCMは好評につきシリーズ化され、振り付けが変わったバージョンもあります。この歌舞伎ダンスもとても好き。
揺籃期〜蓄積期にブランド価値を育成
お買いものパンダが全国的な人気を得るにしたがって、さまざまな楽天サービスで活用したいという声をいただくようになりました。企業キャラクターですから、企業が収益を上げるために貢献するのは当然の考えです。
このとき私たちの頭にあったのは、ブランド価値を貯めるべきフェーズでクオリティ水準を高めておくことです。逆に言えば、拙速な拡大やマネタイズをはかり摩耗されてしまうようなキャラクターにならないように注意するということ。
キャラクターグッズの市場規模は1兆2000億円前後のまま20年近く横ばいです。『鬼滅の刃』のように人気のアニメ、キャラクターが誕生する裏には、あっという間に関心を失うあまたのキャラクターたちがいます。
そこでブランド戦略企画メンバーと練った方針のひとつは、キャラクターのライフサイクルを見極め適切な施策を打つということ。
お買いものパンダの場合は誕生から4年ほどをキャラクターの揺籃期〜蓄積期として、ブランド価値の育成に有用な戦略案件に絞り、クリエイティブクオリティにもこだわり抜きました。LINEスタンプに加え、サンリオ『マイメロディ』とのコラボ、『CanCam』の雑誌付録や『ほぼ日手帳』などをやっていたのがこの頃ですね。
楽天サービスと組むときも「売らんかな」に見えないよう、キャラクター設定の徹底や(お買いものパンダ=楽天ユーザーです)、エモーショナル性・エンターテインメント性などお買いものパンダ自体がもつ魅力と重なる企画でのみ登場させるようにしていました。
当時、私が楽天の中で(影で)言われていたあだ名は「お買いものパンダの番人」。そのくらい、企画やクリエイティブにうるさかったと自覚もあります。
周囲へのコミュニケーションは振り返ると大いに反省があり、社長からもたびたび怒られましたしご迷惑をおかけした上長の方々もいて本当にすみませんでした!!という気持ちなのですが、初期にクオリティにこだわったこと自体は必要だったと思っています。
結果的に、お買いものパンダに嬉しさや親しみやすさといったポジティブなブランド価値を貯めることができ、楽天自体のブランド力向上にも寄与することができましたし、その後徐々にフェーズが活用期に移ってからも、蓄積したブランド価値を維持・向上しながら多くの楽天サービスの収益にも貢献しています。
なお先程見たら、現在のお買いものパンダのクリエイティブガイドラインは84ページありました。いつの間に。環境に合わせて進化させつつ、各事業や企業のニーズとの重なりを模索しながら企画推進をしてくれているチームの存在には感謝しかありません。
一流のクリエイティブを生み出すというアスピレーションと実現するための積極投資をしていくことは、お買いものパンダやCMのみならず、顧客戦略部のサービスづくりに一貫しています。そうした体験のクオリティが、その後のロイヤルティや売上につながっていきます。
ブランディングCM制作は一般的に効果の回収が見えづらいと上で書きましたが、この一連の楽天ポイントのCMは事業収益に結びつき、マーケティングROIも基準を超えた成功例となっています。そんなブランド戦略やKPI設定、分析についてご興味ある方は、お気軽にコンタクトください。ぜひお話ししましょう。
CMの制作エピソードについては、こちらもあわせてどうぞ。
※1 2020年10月26日現在。TikTokアプリ内の動画再生回数をもとに集計
※2 ポイントに関する調査、有効回答=1,000、インターネット調査、2020年7月、実施機関:マイボイスコム
※3 CM好感度ランキング(CM総研, 2016年6月前期)